伊東市十足・小川賢治さん、富子さん
伊東市郊外の山あいにある十足(とおたり)の農家直営レストラン「風の詩」は、今年で開店10年目を迎える。営むのは小川賢治さん富子さん夫妻。代々続く農家の10代目として米作りをしながら、地域に愛される店を切り盛りしている。農家に転身するまで中学の教員だった2人。賢治さんは社会科、富子さんは家庭科を担当していた。50歳を迎えるころ、小川家の田畑を守ろうと決意。セカンドライフを農業に懸け、2人で早期退職を決めた。

しかし田畑の面積から考えると農業一本で生計を立てるのは難しい。模索する中で出合ったのが、「農業の6次産業化」という考え方だった。育てた米や野菜を加工し、提供する農家レストランなら可能性があると考え、調理師免許や野菜ソムリエの資格も取得して準備を進めた。

畑の一角に建てた店は、メディアで取り上げられ評判に。半年も経たないうちに軌道に乗り、今では予約必至の人気店になった。かつての教え子や同僚も足を運び、懐かしい再会の場にもなっている。「人や地域のつながりが今に活きている。社会科の知識は農業に、家庭科の経験は食育に役立っている。人生で無駄なことは一つもないなって改めて思います」と賢治さんは目を細めた。


おしどり夫婦
仲の良い小川さん夫妻。仕事以外でもいつも一緒にいるそう。夫婦円満の秘訣を尋ねると、賢治さんは「とにかく会話すること。ケンカをしたとしても言葉でぶつかり合って、感情を表すことが大事です」と話す。富子さんも「私たち考え方が似てるんです。仕事も子育ても同じ方針でした」と笑顔を見せる。お互いを尊重し、良いところを口に出して伝え合ってきた2人。これからの目標も同じで、畑での無農薬野菜作りの再開を目指す。2人はこれからも同じ歩幅で歩んでいきそうだ。


▼ここで食べられます
農家カフェ&レストラン 風の詩
伊東市十足267-11
☎090-5002-6745 営/11:30~17:00 休/火・水・木
レストランは予約優先、ランチセット 1540円(個数限定)
※加工品は「JAふじ伊豆 いで湯っこ市場」(伊東市)でも販売
※内容は2025年10月10日時点の情報です。




