静岡市駿河区・(左から)中村正和さん、正治さん、京香さん
広いひろーいいちご畑が続くのは、久能山(静岡市駿河区)のふもとにあるしずおか中村農園。1900年創業で代々伝統の「石垣いちご」を作り続けている。

ビニールハウスに入ると、腰の高さまであるイチゴの畝が見渡す限り並んでいた。よく見ると石垣ブロックの穴から力強い葉っぱがにょきっと伸び、大きくて真っ赤な実がぶら下がっている。2段や3段になっていて、まるでいちごのマンションのよう。これが伝統の石垣いちごの栽培法だ。

5代目の中村正治さんによると、石垣いちごの歴史はこうだ。ビニールハウスもない明治時代、久能山東照宮の宮司が外国人からいちごの苗をもらった。それを譲り受けた宮司の車夫が裏山の石垣に植えたところ、冬にもかかわらず果実を実らせた。それをきっかけに日当たりのいい久能山の斜面に石垣いちご畑が広がった。

ところが栽培には大きな労力がかかる。整備された農道もなく急斜面での作業が多い。次第に耕作放棄地も増え、農家は全盛期の半分の60軒ほどになった。それでも中村さんは伝統を後世に残したいと願っている。「正直言って大変だけど、他に類を見ない方法だからいちごだけはやり続けたいな」


積み替える
全1万株の収穫を終えると、さらに大変な仕事が待っている。入梅の暑い時期、腰の高さまである畝を鍬で崩し石垣を積み替えるのだ。積み替えは1年ごとに行われる。普段のいちごの管理や収穫も腰に負担がかかる重労働。「作業が楽な高設溶液栽培のいちごが主流になってるけど、土で育った石垣いちごは甘いし実がしっかりしている」と中村さん。感動の絶品いちごをご賞味あれ。


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※内容は2025年4月10日時点の情報です。